受身の練習方法

<受身の目的>

相手に投げられた時にしっかりと自分の身を守ること
(=安全な受身をとることは、相手の身を守ることにも繋がる)。
 
1,頭を打たない。
2,身体(背部)が受ける衝撃を小さくする。
 
 
 

<動作のメカニズム>

柔道では投げられた時に2つの現象が発生する。
 
回転…転がるように畳に投げられる

落下…真っ直ぐに畳に叩きつけられる
 
この“回転”と“落下”を利用することが身体が受ける衝撃を和らげるポイントになる。
 
 
 
衝撃を少なくするためにはどうしたらいいのか?
 
①衝撃を受ける時間を長くする
衝撃を受ける時間を長くするための方法が転がること、すなわち“回転”。
真っ直ぐに畳に着地するよりも、回転しながら畳に着地する方が畳に触れている時間が長い。
受身を取る時に回転するのは、畳に触れている時間を長くして、衝撃を少なくするため。
 
 
②畳に落ちる速度を遅くする
落ちる速度を遅くするためにどうしたらいいか?これが「手を叩く」という動作につながる。
 
自分の身体が畳についた瞬間、手で畳を叩くことで、落ちる方向とは逆方向に力が働く。
逆方向に力が働けば、自然と落ちる速度は遅くなり、結果的に身体が受ける衝撃は少なくなる。
 
 
③顎を引く(頭部を守る)
頭部に加わった力に対してコンセントリック(短縮性)な力を発揮して頭部を守るのではなく、先に顎を引いておき、畳に向かって加わる力(重力と頭の重さ)に持って行かれないようにする=耐筋力そしてエキセントリック(伸張性)な力を発揮して頭部を守る。
 
つまり、畳に頭が着く瞬間に顎を引く(コンセントリックな力)ではなく、投げられる瞬間から顎を引いておく(エキセントリックな力)ことが重要。
 
 
④(参考)柔道初心者の特徴
 

 
後方受身の際の動作分析で、柔道の初心者は、有段者に比べて打ち手が早いことが示されている。
その結果畳に着く際の衝撃が大きく頭も打ちやすい、つまり初心者では自分の身体を守ろうとしてかえって危険な動作をするということ。
 
同研究ではさらに、有段者は左右の肩が同時に畳につくが、初心者では不揃いで着地時の衝撃が片方の肩に集中する原因となり、結局、初心者では恐怖心からかえって身体への衝撃を大きくしているというパラドックスが成立している。初心者は危険や痛みから身を守ろうとして、かえってとっさに危険な動作をすると言い換えることができる。
 
『柔道とは柔(やさ)しい道である。(米田實著・宮崎誠司共同執筆/ベースボールマガジン社)』

 
 

<受身の練習方法~ステップアップ~>

Step1.
受身の形を覚えると同時に、受身における回転・落下を覚える
(「単独練習」・「ペアもしくは3人組練習」)。
 
 
Step2.
「投技もどき」として、投技そのものではなく、投技に似たような動きを使って、相手に外的な力を加えてもらい、投げられる感覚を体感する(「ペアもしくは3人組練習」)。
 
 
Step3.
どの技を掛けられた時にどんな受身をとればいいか、投技に合わせて受身を微調整する(「投げ込み」,「約束練習」)。
 
 
Step4.
相手にランダムに技を掛けられても、安全に正しく受身を取ることができる(「約束練習」,「乱取り」)。
 
 
 

<練習方法>

 

1,単独練習

恐らく普段の稽古から取り組まれていると思うので、ここでは具体的な練習方法については割愛します。
各受身についてキーワード・ポイント(塾生の皆さんに指導して欲しいこと)だけまとめました。
 
 
⑴後受身
・手を叩くタイミング→帯が畳につく瞬間(<動作のメカニズム>②による)
・お尻を踵に一番近いところにつける→衝撃が少なくなる
・やわらかくリラックスして肩の力を抜いて力強く叩く(腕と体側の角度は30度)
 
 
⑵側方受身(横受身)
足の着地にも意識を向ける→足の裏と側面を畳につける
 
 

⑶前方回転受身
・前に回る(横回りにならない/<動作のメカニズム>①による)
・かばい手は小指を前に向け、自分の前に出ている足よりも前につく
 
 

2,ペアもしくは3人組練習

 
⑴後受身
【A.一人がカメもしくは馬になる】
 
・背中から落ちる前から顎を引いておく(<動作のメカニズム>③による)
・なるだけカメに近い位置にお尻から畳につくように落ちる(衝撃が少なくなる)
 
 

 
 

【B.帯を利用する】
 
・取は足を使って相手に一気に近づく
・受が思わず手を付かないように注意する(必ずお尻からつける)
 
 

 
 
⑵横受身
 
【C.回転横受身】
 
・取は相手を一気に真上に引き上げる(腰を落として相手に近い距離にいること)
・受の畳をたたくタイミングに注意する(遅すぎず早すぎず
・受の足の形にも注意する(裏と側面がちゃんと畳についていること)
・左右両方練習する
 
 

 
 
【D.体捌きで転がされる】
 
・受は両膝立ちから前に転がって受身をとる
・取は“前捌き”もしくは“後捌き”
・左右両方練習する
 
 

 
 
【E.出足払もどき】
 
・両袖を握り合う。
・受は取の斜め前の足を踏むように大きく足を前に出す。
・最初はゆっくり、段々とスピードをアップしていく(足を払うタイミングを合わせていく)。
・最後はランダムに。
 
 

 
 
【F.隅落もどき】
 
・真後ろに倒れない!必ず「横受身」を取る!
・取は釣手を使って相手を大きく呼び込む感覚をつかむ。
・左右両方練習する
 
 

 
 
【G.大外刈もどき】
 
・真後ろに倒れない!必ず「横受身」を取る!
・左右両方練習する。
・取は大外刈の崩し(相手を“後隅”に崩す)、足を大きく前に出す感覚をつかむ。
 
 
※「初心者や熟練者でない経験者は、大外刈の崩しは真後ろに崩し、熟練者は後ろ隅(右組は相手の右足,左組は相手の左足)に崩すことが多い
(『柔道とは柔(やさ)しい道である』)。」
 
 

 
 
【H.三人組①】
 
・カメの足はクロスする。カメの頭の向きに注意。
・取は投げる感覚(引手は最後まで意識し、懐にしまう)をつかむ。
 
※動画は引き手が甘いです。。。。
 

 
 
【I.三人組②】
 
 

 
 
⑶前方回転受身
【J.一人がカメもしくは馬になる】
 
・カメの頭の向きに注意。
・受身を取る人は4本指を下にして5本の指で帯を握る。
・前に回る際に頭から突っ込んでいかないように注意が必要。
 
 

 
 
 
【K.大腰,背負投等で一度持ち上げられてから畳に足をついて受身を取る。】