「鬼滅の刃・煉獄杏寿郎」と「柔道の創始者・嘉納治五郎」の共通点 〜母の教え〜

館長(コラム・講演・対談) 2020年11月5日
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『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を見てきました!
煉獄杏寿郎、噂に違わぬお方でした。
若くして柱としての使命を果たし、自らの信念を貫き、命を賭して多くの人々の命を守った姿は、私たちの心を鷲掴みにしました。
 


 
鬼滅の刃公式ポータルサイトより
https://kimetsu.com/

 
 
 
なぜ煉獄杏寿郎が真の強さを持った人間へと成長したのか。
その答えは、煉獄杏寿郎が子供の頃に亡くなった母の言葉にあるようです。
自分の命の終わりを悟った母は、煉獄少年にこう問いかけます。

 

「なぜ自分が人よりも強く生まれたのかわかりますか?」
 
答えに窮している煉獄少年に母はこう言います。
 
「弱き人を助けるためです。生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者は、その力を世のため人のために使わねばなりません」
「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」
 
 

煉獄杏寿郎は、最後までこの母の教えを守り抜くのです。

 
 
 
 

母の教えと言えば、我らが嘉納治五郎師範。
嘉納治五郎も9歳(本によっては10歳)の時に、母・定子を亡くします。
嘉納治五郎関連の本には、母が幼き日の嘉納治五郎にどのような教育をしたのかが描かれているものが多いです。
 
3冊ほど、抜粋して紹介します。
 
 
 

 
「人として生まれてきた以上、他人のために尽くすのは当たり前」
こう言いながら、母は心配事のある人や困っている人に対し、わが事のように尽くしました。母の「人のために尽くす」という教えは、治五郎の心に深く刻み込まれました。この教えが、のちに自分だけでなく他人の栄えもはかるという「自他共栄」の精神につながっていくのです。
 

 
〈なぁにくそ!嘉納治五郎と幻のオリンピック(藤堂良明・著/国土社)〉
 

 

 
「人と分けへだてなくつきあう。人の上に立つ者は先に苦しみ、人のあとから喜ぶ」
それが母の教えだ。嘉納治五郎 書籍 日本オリンピックの父
 
 

 

〈日本オリンピックの父 嘉納治五郎(佐野慎輔・文/小峰書店)〉
 

 

 
(作品中に出てくる“伸之助”という名前は、嘉納治五郎の幼名です)
 
嘉納治五郎 書籍定子は、名家令嬢育ちであることを鼻にかけるどころか、貧しい人ともわけへだてなくつきあう、公平な心の持ち主で、屋敷に、食物に困った人がくれば、食物はもちろん、衣服まで分け与えるような人でした。
伸之助の友だちに対する態度も同じでした。貧しい家の子も金持ちの家の子も、平等にあつかい、おやつのお菓子も平等に配ります。
ただし、伸之助だけは、必ずいちばん後。数がたりなそうなときは、伸之助まで、お菓子がまわってこないこともありました。
「母上、わたしにもください」
伸之助が文句をいうと定子はこう返しました。
「おまえは嘉納家の子。人よりもめぐまれて、また、人の上に立つことになるのです。
そういう者は、自分はあとまわしにするものなのです」
 
〈ストーリーで楽しむ伝記 嘉納治五郎(石崎洋司・著/岩崎書店)〉
 

 

 

嘉納治五郎師範遺訓では、柔道修行の窮境の目的について説かれています。
 
「己を完成し、世を補益するが柔道修行の窮境の目的である」
 
ここに柔道の全てが集約されていると私は考えています。
まさしく母の教えそのものではないでしょうか。
もし、この母の教えがなかったら、柔道はただただ表面的な強さを競い合う陳腐な武道になっていたかも知れませんし、柔“道”ではなく、現代柔“術”の一つとして発展していたかも知れません。
 
 
私も微力ながら“柔道の先生”として、子供たちに、自分が柔道で鍛えた心身は、将来世のため人のために使うのだ、と言うことを伝え続けたいと思います。
また、自分自身がそれを体現している人でありたいと思います。
 
自戒を込めて。
 

 
 
この映画評は秀逸です!
こちらも合わせてご覧ください。
 
 

 
鬼はいる。私たちの隣りに、この社会の内側に。
映画『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎が伝えたこと。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f9a73a7c5b6c7fe582c0321
 

 

 

 

 

館長・坂東真夕子

 

 

 

 

 

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