柔道の極意「脱力」とは~野村忠宏 理論~

港南道場 2019年5月16日
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「馬鹿力」をつけても、「力馬鹿」にはなるな。

 

これは、私が教員時代、選手たちによく言ってきた言葉です。
もちろん、柔道に筋力は必要ですが、力のみに頼りすぎると、うまく技に入れないばかりか、時には怪我にもつながります。私自身も過去に、強引な技をかけたり、かけられたりして怪我をしたことがあります。
やはり、美しい技を目指し、長く柔道を続けるためには「力を抜く」練習が必要です。

 
 
60㎏級五輪3連覇の野村忠宏氏は、著書で以下のように述べています。

 

背負い投げという技は、タイミング、釣り手、引き手、手首の使い方、ヒジのたたみ方、腰の回転の仕方、膝をついてから相手を投げきるまでと、全部が一連の動きでつながっているのだ。スピードだけがあってもダメ、力だけでもダメ。そして一番大事なのは瞬間的に「力を抜く」という脱力の感覚である。軽量級同士の戦いでは必ず相手が低い姿勢を取ってくるから、まずは半身で体を入れるスペースを作らねばならない。強引にではなく釣り手と引き手をうまく使いながら相手のバランスを崩して隙を作り瞬間的に中に飛び込む。大事なのは決して力まないこと。具体的には技に入る瞬間に肩の力を抜くのだ。
 
(中略)
背負い投げは力だけでは投げることができない。タイミングとスピード、そして、腰を落とす回転力。そのすべてを生かすために瞬間的に力を抜かねばならない。
 
(中略)
「柔道は力」。それは僕の基本的な考えで、今も変わっていない。
技を生かすには力が必要だ。しかし誤解してもらっては困るのは、単なる力自慢のパワーや筋力だけでは勝てないということ。外国人選手のような圧倒的なパワーという力もあるけれど、柔らかさを兼ね備えておかねばならない。その柔らかさとは瞬間的に「力を抜く」脱力の極意である。それらを総じて「柔道力」と言っていいのかもしれない。
 
 
(『戦う理由』野村忠宏・学研プラス)
 
 

 
 
以前、何人かの成年部塾生様から「お互いに力が入りすぎて、技に入れません」というご相談がありました。
そこで志道館では「技に入るきっかけづくり」を5月の目標としています。(全クラス共通)「足技からの連絡技」や「釣手の呼び込み動作」など、技に入るきっかけをいくつか練習していますが、その中で最も特徴的なものが「パタパタ」です。
手首・肘・肩を連動させながら、釣り手を内側、外側へパタパタとしなやかに振る動作を、志道館ではこう呼んでいます。この動きを乱取り中にすると、相手が崩れるだけなく、自分・相手共に、筋肉の緊張が適度にほぐれ、技に入りやすくなるのです。塾生の皆さんは、この「パタパタ」で力の抜き方を覚えながら、よりよい柔道を目指して日々の稽古に励んでいます。

 

柔道は、単なる力比べではありません。
だからこそ、小さな子どもから大人まで楽しむことができます。「脱力」は簡単なものではありませんが、お互いに投げて、投げられてを繰り返しながら、柔道の極意を少しずつ体得していきましょう。
やっぱり柔道は、奥が深くて面白いですね。

 

 
 
 
 
 

綾川 浩史

 
 

 

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
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