【柔道×国際交流】フランス人柔道指導者御一...
館長(コラム・講演・対談) 2023年10月31日先日の「大人クラス」に、研修のため来日しているフランス人柔道指導者12名が参加しました。 フランスは「...
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文武一道塾 志道館を立ち上げたきっかけの一つが、知覧特攻平和会館で見た若き特攻兵たちの遺書や家族に当てた手紙を見たことです。
国や家族を思う手紙の内容もさることながら、その美しい文字や美しい文体、辞世の句が読める教養の高さに頭を後ろから殴られたような衝撃がありました。
特攻兵は10代後半から20代前半の若者が中心です。
翻って私も含めた今の日本人はどうでしょうか、、、?
どんな教育を受けたらこんな高い教養を身につけられるのだろうか?
そんな疑問が以前から漠然と興味があった“教育”分野へ、私を向かわしめたのです。
知覧から5年が経った現在、文武一道塾 志道館はお陰様で5年目も半ばに差し掛かりました。
柔道稽古の前後には、小学生が学校や塾の宿題をやったり通信教育や市販のドリル等に取り組む“勉強時間”を設けています。
小学生たちの勉強をみている中で感じているのは、全体的に漢字や文章の読解力が弱い、ということです。
学校の宿題でも私が子供の頃に比べると、漢字を反復して書く量が圧倒的に少ない。
なので、せっかく習った漢字を「志ノート」(毎稽古後に記入する振り返りのノート)を書くときにも使わなかったり(使えない、使いこなせないという方が正しいかもしれません)、凡ミス(“さんずい”が“にすい”になる、本来突き抜けるところを突き抜けない等々)が多いように感じます。
漢字や文章の読解力は、算数にも影響してきます。例えば文章題の中に習ったけど
読めない漢字あるとか、問題そのものが何を問われているのか分からない、ということが起こってきます。
また仮にその文章題の中で一語自分の知らない言葉が出てきても、文章の前後から
予測を立てるということもできなくなります。
でも、みんな計算問題は比較的よくできています。
誰もが知る某大手学習塾の宿題を道場で取り組んでいる子も多いのですが、そのプリントもひたすら計算問題というパターンが多く、その辺の力は鍛えられていると感じます。
算数力とは計算力なのだろうか?
ひたすら計算を繰り返してところで得られるものは何なのだろうか?
何かが抜け落ちているのではないか?
いつしかそんな疑問を感じるようになりました。
「AI vs 教科書が読めない子どもたち(新井紀子 著/東洋経済新報社)」、今売れている本です。
シンギュラリティの到来やAIに職業を奪われる等々、近年AIは話題に事欠きません。
筆者はシンギュラリティは到来しない、と断言しつつもAIが労働産業に参入してくるであろう近未来を楽観視していません。むしろこのままだと“AI世界恐慌”が起こるのではないかと、危機感を募らせています。
その危機感はどこから来ているのか?それは題名にもなっている「教科書が読めない子どもたち」の深刻な実態です。
私は日本人の読解力について大がかりな調査と分析を実施しました。そこでわかったのは驚愕すべき実態です。日本人の中高校生の多くは、詰め込み教育の成果で英語の単語や世界史の年表、数学の計算などの表層的な知識は豊富かもしれませんが、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できないということがわかったのです。これは、とてもとても深刻な事態です。
英語の単語や世界史の年表を憶えたり正確に計算することは、AIにとって赤子の手をひねるようなことです。
大東亜戦争の敗戦から立ち上がり、高度経済成長を遂げた日本。高度経済成長は、大量消費社会、学歴社会を生み出しました。かつてはいい大学に行けば、いい会社に就職できる、そして結婚してマイホームを持つ。それが成功の象徴、人生のゴールであるような時代があったことでしょう。
いい大学に入るための受験のための勉強ーそれは、筆者の言葉を借りるならば「AIで代替できる人材を育成してきた教育」と置き換えらえれ、その歪みが読解力の低下につながっているのではないでしょうか。
前述した“AI世界恐慌”とは、
企業は人不足で頭を抱えているのに、社会には失業者が溢れているー。
折角、新しい産業が興っても、その担い手となる、AIにはできない仕事ができる人材が不足するため、新しい産業は経済成長のエンジンとはらならい。一方、AIで仕事を失った人は、誰にでもできる低賃金の仕事に再就職するか、失業するかの二者択一を迫られるー。
(中略)
それを回避するストーリーは、「奪われた職以上の職を、生み出す」以外にはないのです。
今の勉強法や学習法で「奪われた職以上の職を、生み出す」人材を育てることが果たしてできるのだろうか、私には甚だ疑問です。
「知覧」と「現代っ子の勉強方法に感じる違和感」と「AI vs 教科書が読めない子どもたち」これらがある日、あるキーワードによって全て繋がりました。
それは、半世紀続く老舗教材会社の社長さまとお話しさせていただいていた時のこと。その社長から出た言葉が「基礎学力」。
時代ごとに教科書の内容が多少変わっても子どもたちが身につけるべき「基礎学力」は何も変わらないこと。算数における「基礎」と「基本」の違い。代数は「言葉」であり、幾何は「感性」であること。計算だけをやり続けることの弊害等々、論理的に解説してくださいました。
知覧で垣間見た特攻兵たちの教養の高さ。これは恐らく江戸時代から伝わる「読み・書き・算盤」という「基礎学力」の上に成り立っていたのではないだろうか。
そして、現代の勉強法に抜け落ちているもの、それが「基礎学力」ではないか。
何事も「基礎」を築くには時間がかかる。結果が目に見えないことも多い。しかし高度経済成長期以降、結果(テストでいい点数を取る・受験に受かる)を重視するあまり「基礎学力」を築く、この大切な過程が軽んじられてしまったのではないだろうか。
この「基礎学力」を築くために文武一道塾 志道館ができること、今後はそういったことも考え、取り組んでいきたいと思います。
館長・坂東真夕子
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